北朝鮮の長距離ミサイル発射予告の狙いは?

最近北朝鮮は国際民間航空機関や国際海事機関に人工衛星打ち上げの関連情報を事前に通報した。私はこのニュースを視聴して「又、始ったか」と思い、まったくあきれてしまった。

2月の米朝高官協でミサイル発射一時停止を条件に24万tの食糧支援実施などで合意した北朝鮮が突如ミサイル発射を発表した事は、国連決議や米朝協議合意に対しての露骨的な背信行為であり自由と民主主義、人権と人道主義を尊重する人類に対しての挑発行為としか言えないと思う。

米、日、韓を始め関連国が遺憾と中止を発表したとしても北朝鮮は断固として姿勢を崩さないと思う。特に今年の4月15日は故金日成生誕100年になり北朝鮮は以前から

2012.4.15までに「強盛大国」を建設すると宣言していた。これは故、金正日の遺訓の内の一つである。

 

<目的と意図>?

これを機に北朝鮮で新しく世襲された金正恩指導者の元に国内の民心を確固不動に結集させる所に目的があり、周辺国家に対して国力と威信を高める事を元にして新しい「金正恩体制」一致団結とした結束を図る大きな意図があるとは明白な事である。

2番目の目的と意図はアメリカを始め韓国、日本に核戦争の危機を与えそれに対しての抗議、懸念や反対声明、国連結議を意図的に盛り上げさせて一時停止、核開発放棄の約束と合意の代価に莫大な経済援助(支援)を炙り出そうとしている。

それは経済的に崩壊直前に直面している北の経済状況は誰よりも北の政府当局者が良く知っている。だからと言って中国の様に改革改放すれば世襲王朝のシステムが壊れてしまう怖れがあるので最後の切り札としてアメリカに向って振まう手段は核武器しかないからである。事実アメリカが一番懸念しているのは北の核開発であるからである。この様な瀬戸際外交は金正日の奥手でもあった。

3番目は軍部が掌握、強行している武力万能の「先軍政治」を維持、強固化させる為だと思う。もし先軍政治と言う国家システムが解体すると改革改放の門が開き軍部無用、核武器は鉄くずになってしまうからである。

私が北に居た頃から金正日は「我国の自由と幸福は銃剣から生れ銃剣で守ると言う事を忘れてはならない」と強言していた。

私は正直言えば北朝鮮が目指している「強盛大国」建設自体には反対したくない、何故なら、強盛大国の本当の意味は、経済が順調に発展し国民が食べ物に心配なく、人並みの生活が出来ることのはずだからだ。そして、今のような先軍政治ではなく、自国を守るための最低限の軍隊に縮小し、周囲の国とも平和的な外交を行う、何よりも拉致問題や人権問題を金日成、金正日の時代の過ちとして深く謝罪し、日本人妻問題などから丁寧に解決していくことが重要である。

そうすれば近隣国家とも仲良くなり、現在の様な国際孤児の様な立場から抜け出しグローバル社会の一員として共存共生出来ると思う。何より北朝鮮の国民が人間として生命維持の初歩的な問題である。食糧問題がある程度解決し、飢餓から逃げ出す事が出来るからである。

なのに現在、「宇宙観測用人工衛星の打ち上げ」と名付けでミサイル発射とは何事であろうと思う。あいた口がふさがらない。前私が北に居た時、2006年7月頃だった、家でテレビを観ていた所、緊急報道と言って語用女性アナウンサー イ、チュニさんが「我国の技術と力で開発されたテポドン2号の人工衛星がアラスカ方面に向って発射され人工衛星からは「金日成将軍の歌」が電波を通じて流されている。これこそ我国の科学技術の偉大な成果である」と熱狂的に幾度も報道していた事を覚えている。私はその時、「今住民達が喰う物も喰えず飢えて死んでいるのに何が人工衛星か!まったく馬鹿みたいな話だ」と憤激すると傍にいた息子が「あんな事をするより配給でも当り前にくれた方がもっとうれしいかもね」と愚痴をこぼしていた。誠にその通りだと思った。

人間にしろ畜生にしろ腹がペコペコになって空いている時何よりも食物をくれる人が一番ありがたく、うれしい事である。北朝鮮の住民達が欲しいものは、ミサイルでなくトウモロコシである。弾導ミサイルや核武器などには何んの興味もない事である。

誰の為に何んの為にミサイルが必要であろうか。

国の住民が飢えて死んでいるのに「宇宙観測のために自国防衛のために」とはまさに言語道断である。電力が無く工場が生産中止されガソリンがなく畑や田んぼを耕す耕運機やトラクターや貨物車等が古鉄になっている状況なのにミサイル発射とは国民の生活状態には然々関心が無いと言う事である。北でミサイルを開発し発射に至るまで約8.5億ドルと言う巨額な外貨が消費されると言う。その外貨ではトウモロコシ250万t、米、150万t、小麦212万tを買えるし、人口2,400万の北の住民が9-10ケ月分の食糧を供給する事が出来ると言う。核を投げすて食糧購入が最優先だと思う。これこそ切実な死活問題である。

もしかすると再び1990年代の「苦難の行軍」と言う恐ろしい大規莫な飢餓危機と言う大虐殺の惨劇が到来するかも知れない。事実現在も食糧飢餓で苦しんでいる事も世界中が知っている。

何より北の政府が核開発を中断しその資金で住民の食糧問題を解決して欲しいと言うのが私の最大の願いである。

3月28日 関東脱北者交流会代表 木下公勝